どうなる? 薬剤師業界の今後について

薬剤師
薬剤師・医療スタッフの女性(とりすたー様,PhotoAC)

 薬剤師業界の今後は人口減少と高齢化、地域包括ケアの拡大がカギとなってきています。安定職とされてきた薬剤師も、役割の変化と新しいスキル習得が求められる時代に入っており、今回はそうした事情について見ていきます。


薬剤師業界の背景と課題

  • 需給バランスの変化
     薬剤師の需要そのものは高いとされています。少子高齢化が進むにつれ医療の需要、ひいては薬剤師が必要になる場面も増加しているからです。しかし、毎年1万人前後が薬剤師国家試験に合格しており、特に都市部では供給過多が懸念されています。需要はあるにせよ薬剤師の数がそれを上回れば、優秀な薬剤師を取り合う構図になると予想されます。
  • 経営環境の厳しさ
     調剤薬局は薬価引き下げやドラッグストア併設型店舗の拡大、大手企業の処方箋サービス台頭により競争が激化。調剤併設型のドラッグストアには「薬の他に日用品も買える」「夜遅くまで営業しており行きやすい」という利点があります。どちらにせよ「少人数で効率よく回す」という経営方針になっていくと考えられ、「薬剤師は安定している」とも言い切れない状況になりつつあります。

技術革新と薬剤師の役割変化

AI・機械化の進展

 近年はAIや機械化が著しく進歩しています。調剤ロボットや薬歴自動作成ソフトが普及し、単純な調剤業務は自動化されつつあります。そのため、将来の薬剤師は「機械にできない領域」へシフトする必要があります。

求められる新スキル

在宅医療・訪問薬剤管理
 高齢化が進む日本では、病院や薬局に通いづらい・通えない患者が増えています。薬剤師は調剤室にとどまらず、患者の自宅を訪問し、服薬状況や副作用を確認する役割が拡大していくと予想されます。

地域包括ケアでの多職種連携
 医師・看護師・介護職などと協力し、患者の生活全体を支える「地域包括ケア」が広がっています。薬剤師は薬の専門家として、チーム医療の中で積極的に意見を出すことがより一層求められます。

健康サポート薬局での予防支援
 単に薬を渡すだけでなく、生活習慣病の予防やセルフメディケーション支援も薬剤師の仕事になりつつあります。血圧測定や栄養相談など、地域住民の「健康相談窓口」としての役割を担えるかどうかは重要です。これまでも患者との信頼関係を築く事は大切な要素と言えましたが、今後より人と人とのコミュニケーションが重要になります。

キャリアの多様化
 直接薬剤師の業務と関係があるわけではありませんが、薬剤師のライター、監修など「薬剤師ならではの知識を活かした周辺領域」も拡大する傾向にあると考えられます。専門性を活かしつつ新しい働き方を模索する流れが強まっていくと予想されます。


まとめ

 薬剤師業界の未来は変革の時期に差し掛かっています。技術革新が今後進んでいく中、地域医療や予防医療に積極的に関わり、コミュニケーション力を身に着けていく事が重要になっていきます。

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